ドローンにも国家資格(免許制度)が導入されました。
- 免許持っていないと飛ばせないの?
- 国家資格(免許制度)を知りたい!
- 空撮では必要なの?要らないの?
「免許を持っていないと飛ばせない」と思っている人も多く、国家資格が必要なのかどうかモヤモヤしている人も多いと思います。
この記事ではドローン空撮するうえで免許が必要なのかどうか、そして免許制度についてわかりやすく解説していきます。
空撮するのに国家資格は不要
空撮でのドローン飛行に無人航空機操縦者技能証明(国家資格/免許)は必要ありません。
持っていなくても、これまで通りの手続き(国土交通省への飛行許可・承認申請)で飛行可能ですし、持っていることによるメリットはありません。
免許には「一等」や「二等」がありますがどちらも必要なし。
国家資格(免許)が不要な理由
国家資格が必要ない理由は下記のとおりです。
- 型式認証・機体認証された機体がない
- 一等資格は産業のための資格だから
- 二等資格を取得してもメリットがない
型式・機体認証された機体がない
国家資格(免許)には「一等」と「二等」がありますが、どちらも取得することによるメリットがあります。
- 一等資格:立ち入り制限を行わず第三者の上空で特定飛行できる
- 二等資格:立ち入り制限を行う一部の特定飛行の申請を省略できる
しかしどちらも国家資格(免許)を取得するだけではダメで、取得した者が型式認証や機体認証されたドローンで飛ばす必要があるのです。
国が認めた安全基準を満たしたドローンで飛ばさないといけません!
つまり国家資格(免許)を取得しても、型式認証や機体認証されたドローンがなければ何の役にも立たないわけで、現状はそのようなドローンはありません。
- 空撮ドローンは型式認証や機体認証されない可能性大
- 現状は型式認証や機体認証されたドローンはありませんが、いずれは認証されるドローンは出てきます。
ところが、認証されるドローンは主に産業用の機体であって、空撮用の機体ではありません。認証には厳しい安全基準を満たすための機能が必要で、これらの機能が空撮用の機体に搭載される可能性は低いです。
一等資格は産業のための資格
国家資格(免許制度)を導入する主な目的は、立ち入り制限を行わず第三者の上空で特定飛行するためであり、それを実現するのが一等資格です。
ただ、これはあくまで産業(物流など)での飛行がメインであって空撮は対象外。つまり、空撮目的で立ち入り制限を行わず第三者の上空を特定飛行するのは無理なのです。
この飛行方法を実現するには「第一種型式認証・機体認証」されたドローンが必要であり、その安全基準を満たす機能は空撮用ドローンに搭載されません。
「一等資格」は産業向けであり、そもそも空撮とは関係のない資格。
二等資格を取得してもメリットない
空撮に関係してくるのが「二等資格」です。
この資格を持っていることにより、立入制限を行ったうえで一部の特定飛行を国土交通省への飛行許可・承認申請なしで飛ばせます。しかし、これにも「第二種型式認証・機体認証」されたドローンが必要で、空撮用ドローンでそのような機体は出ない可能性が高いです。
仮に「第二種型式認証・機体認証」された空撮用ドローンが登場しても、二等資格を取得することによるメリットは、国土交通省への飛行許可・承認申請を省略できるだけです。
国土交通省への飛行許可・承認申請は「包括申請」であれば年に1度やればいいわけで、そこまで面倒ではありませんよね。
資格を取得するために掛かるお金と取得後のメリットを考えると、全然取得する意味がないのが現実なのです。
空撮は引き続き国土交通省への「飛行許可・承認申請」
空撮目的の飛行なら、引き続き国土交通省への「飛行許可・承認申請」だけでOKです。
これは2022年12月5日以前に行ってきた手順とまったく同じ。なにか新しくなったこともありませんし、従来通りDIPS2.0の手続きで問題ありません。
今後も国家資格(免許)が必要になることもありませんので、これまでの「包括申請」や「個別申請」で対応しましょう。
特にこれまでと変更はありません!
ドローンの国家資格(免許制度)
ドローンの無人航空機操縦者技能証明(以下、国家資格や免許)についての解説です。
この制度の主な目的は、これまで飛行が禁止されていたレベル4飛行(有人地帯における補助者なしの目視外飛行)を実現させるためです。
【参考記事】無人航空機レベル4飛行ポータルサイト
国家資格の種類
国家資格(免許)には下記2種類があります。
- 一等無人航空機操縦士(一等資格)
- 二等無人航空機操縦士(二等資格)
一等無人航空機操縦士(一等資格)の目的は、立入制限を講じず第三者上空で特定飛行をすることです。一等資格を取得している人が、第一種型式認証・機体認証されたドローンで飛行させることで実現可能。
この飛行は国土交通省への飛行許可・承認申請が毎回必要です。
一等資格は空撮にはまったく関係なく取得する必要なし!
二等無人航空機操縦士(二等資格)は、立入制限を講じた上で行う一部の特定飛行を国土交通省への飛行許可・承認申請なしで飛行させれます。二等資格を取得している人が、第二種以上の型式認証・機体認証されたドローンで飛行させることで実現可能です。
- 申請を省略できる一部の特定飛行
- ・人口集中地区(DID)での飛行
・夜間飛行
・目視外飛行
・人や物件から30m以内の飛行
型式認証・機体認証されたドローンもなく、取得するメリットが飛行許可・承認申請を省略できるだけなので、取得する意味はありません。
特定飛行とは?
特定飛行 (飛行場所) | 特定飛行 (飛行方法) |
150m以上の上空 空港等の周辺 人口集中地区(DID) 緊急用務空域 | 夜間飛行 目視外飛行 人・物件から30m以内 イベント会場上空 危険物輸送 物件投下 |
法律で禁止されている上記の場所や方法で飛行させるには、国土交通省へ「飛行許可・承認申請」が必要で、これらが特定飛行です。
カテゴリー別に見る国家資格の種類
ドローン飛行は上記のようにカテゴリー別にわかれており、飛行場所や飛行方法によって、国土交通省へ飛行許可・承認申請が必要なのか?国家資格が必要なのか?が異なります。
特定飛行 | 飛行許可 承認申請 | 国家資格 | |
カテゴリーⅠ | しない | 不要 | 不要 |
カテゴリーⅡ | する | ①必要 ②不要 | ①不要 ②二等資格 |
カテゴリーⅢ | する | 必要 | 一等資格 |
カテゴリーⅡは下記の条件を満たすことで、一部の特定飛行(DID上空、夜間、目視外、人又は物件から30mの距離を取らない)をする際の飛行許可・承認申請を省略できます。
- 飛行許可・承認申請が不要になる条件
- ・使用する機体の重量は25kg未満
・使用する機体は第二種以上の型式認証・機体認証された機体
・二等以上の無人航空機操縦士の技能証明(国家資格)を保有
以下の特定飛行に関しては、国家資格(免許)を保有していても国土交通省への飛行許可・承認申請は毎回必要です。
- 国家資格を持っていても申請が省略できない特定飛行
- 空港等周辺、150m以上の上空、催し場所上空、危険物輸送、物件投下
カテゴリーⅡは空撮にも関わりますが、前述したように、国家資格を持っていても現状意味ないので、飛行許可・承認申請をすればOKです。
カテゴリーⅢは下記の条件を満たすことで飛行可能です。
- 立入制限を講じないで行う飛行が可能になる条件
- ・使用する機体は第一種の型式認証・機体認証された機体
・一等無人航空機操縦士の技能証明(国家資格)を保有
・飛行の度に国土交通省へ飛行許可・承認申請が必要
カテゴリーⅢの飛行に関しては、一等資格を保有し、第一種型式認証・機体認証を受けたドローンを使用することで実現可能。飛行の形態に応じたリスク評価結果に基づく飛行マニュアルの作成や国土交通省からの許可・承認を必ず受ける必要があります。
試験の流れ
- 手順1DIPS2.0で技能証明申請者番号を取得
DIPS2.0にログインし「技能証明の取得申請へ」から技能証明申請者番号を取得します。これは試験の受験などに使用。本人確認などが完了したら自動で発行されます。
- 手順2登録講習機関で学科と実地を受講(修了すると実地は免除)
学科講習及び実地講習を受講し「修了証明書」を受領します。学科も実地もここで講習を受講しなくても、いきなり指定試験機関で受験できます。
参考:無人航空機操縦士試験公式サイト - 手順3試験申込システムの利用者登録
試験申込システムにアクセスしアカウントを新規作成し、「受験資格の確認」をして試験を申し込みます。
- 手順4指定試験機関で学科と実地と身体検査
学科試験はCBT(Computer Based Testing)方式により実施。実地は登録講習機関での修了で免除されます。
- 手順5試験申込システムで試験合格証明書発行
試験申込システムにログインし「試験合格証明書発行」します。
- 手順6DIPS2.0で技能証明書の発行申請
合格後に発行される「技能証明合格証明書番号」などの必要事項をDIPS2.0に入力し申請。申請する際には手数料の納付が必要です。(一等無人航空機操縦士は登録免許税3,000円も納付)
- 手順7技能証明書が郵送される
審査が完了すると「技能証明書」が発行され郵送されます。
試験は車の免許と同じです。
登録講習機関(教習所)で学科と実地を受講し、修了することで実地試験は免除。指定試験機関(運転試験場や運転免許センター)では学科試験と身体検査だけでOKです。
知識や技能をすでに習得している場合には、登録講習機関へ行かずいきなり指定試験機関で受験する方法も用意されています。
パターン1 | パターン2 |
①登録講習機関で学科と実地を受講 ②受講が修了すると実地試験のみ免除 ③指定試験機関で学科試験と身体検査を受ける ④合格 | ①指定試験機関で学科と実地と身体検査を受験 ②合格 |
パターン2はいわゆる一発試験ってやつです!メリットは登録講習機関での受講料などがかからないこと。
【参考記事】無人航空機操縦士試験のサイト
学科試験
形式 | 試験時間 | 出題範囲 | 問題サンプル | 合格基準 | 有効期間 | |
一等 | 三肢択一式 (70問) | 75分 | 無人航空機の飛行の安全に関する教則 | サンプル問題 | 正答率 90%程度 | 2年間 |
二等 | 三肢択一式 (50問) | 30分 | 無人航空機の飛行の安全に関する教則 | サンプル問題 | 正答率 80%程度 | 2年間 |
学科試験はすべての人が「指定試験機関」で受験します。
登録講習機関ではドローンの知識を学ぶために受講するだけで免除はありません。
試験はCBT(Computer Based Testing)方式で行われます。
実地試験
実地試験は「指定試験機関」で必ずしも受ける必要はありません。
全国各地にある「登録講習機関」で受講し修了することにより免除となります。免除の場合は、登録講習機関が発行する「修了証明書」の提出が必要です。
試験は持ち点100からの減点式で、それぞれ70点以上、80点以上で合格。
身体検査
- 有効な公的証明書の提出
(自動車運転免許証、航空身体検査証明書、無人航空機操縦者技能証明書) - 医療機関の診断書の提出
(6か月以内に受けた検査の結果が記載された医師の診断書) - 指定試験機関の身体検査受検
身体検査は上記3つの方法があります。
身体検査では、視力、色覚、聴力などについて診断されます。
基準 | |
視力 | 両眼で0.7以上 一眼でそれぞれ0.3以上 |
色覚 | 赤色、青色、黄色の識別ができる |
聴力 | 後方2メートルからの音声を認識できるか |
その他 | 第236条の62第4項第1号または第2号にあげる身体の障害が無いことなど |
限定変更とは?
通常の免許では重量25kg未満の機体を使用し、昼間飛行、目視内飛行に限って飛行可能です。つまり合格して免許を取得しても25kg以上の機体は飛ばせませんし、夜間飛行も目視外飛行もできません。
- 通常の試験を合格で許可されること
- ・最大離陸重量25kg未満
・昼間飛行
・目視内飛行
夜間飛行したり目視外飛行をする場合には「限定変更」を行う必要があり、追加で試験を受ける必要があるのです。
限定変更が可能なのは下記のとおりで、これらは新規申請時から行えます。
- 操縦する無人航空機(ヘリ、マルチローター、飛行機)の追加
- 最大離陸重量25kg以上
- 夜間飛行
- 目視外飛行
現状は必要ないですが、もし取得するとしたら「目視外飛行」などの項目は限定変更しておく必要がありますね。
国家資格の費用・料金
費用 | 支払い先 | |
講習受講料 | 各登録講期間による 登録講習機関情報一覧 | 登録講習機関 |
受験申請費用 | ◆学科試験◆ 一等学科試験:9,900円 二等学科試験:8,800円 ◆実地試験◆ 【一等学科試験】 基本(昼間・目視内・25kg未満):22,200円 限定変更:20,800円 【二等学科試験】 基本(昼間・目視内・25kg未満):20,400円 限定変更:19,800円 ◆身体検査◆ 書類での受検:5,200円 会場での受検:19,900円 | 指定試験機関 |
交付申請費用 | 新規申請:3,000円 再交付申請、更新申請、限定変更申請:2,850円 一等のみ登録免許税3,000円 | 国土交通省 |
型式認証・機体認証に関して
機体の認証には「型式認証」と「機体認証」にわかれ、さらに一種と二種にわかれます。
飛行 | 有効期限 | 対象 | 検査 | |
第一種型式認証 | カテゴリーⅢ | 3年 | メーカー等が設計・製造する量産機 | 国土交通省 |
第二種型式認証 | カテゴリーⅡ | 3年 | メーカー等が設計・製造する量産機 | 登録検査機関 |
第一種機体認証 | カテゴリーⅢ | 1年 | 無人航空機の使用者が所有する一機毎の機体 | 国土交通省 |
第二種機体認証 | カテゴリーⅡ | 3年 | 無人航空機の使用者が所有する一機毎の機体 | 登録検査機関 |
型式認証は、ドローン(量産機)を製造するメーカーなどが申請するもので、販売前に行われます。型式認証が通ったドローンは機体認証の検査を全部か一部を省略できます。
例えば空撮機の場合には、DJI社が発売前の機体を型式認証する感じ。
現段階においてDJI社は型式認証する予定はなく、今後もやらないと予想されます。型式認証には厳しい性能・機能が必要で、それを空撮機では満たせないからです。また費用に見合いません。
二等資格を持っていると、国土交通省への飛行許可・承認申請をせずに一部の特定飛行が可能になります。しかしその場合に使用する機体は「第二種型式認証・機体認証」に通った機体である必要があり、DJI社が「第二種型式認証」を通してくれないと意味がありません。
現状通った機体はなく、今後も申請はないと考えられており、空撮においては国家資格を取得してもまったく意味がないわけです!
国家資格に関するよくある質問
- Q受験資格はありますか?
- A
16歳以上で、航空法の規定により国土交通省から本試験の受験が停止されていない人です。
- Q技能証明の更新は?
- A
技能証明の有効期間は3年間です。更新には身体適正の確認や「登録更新講習機関」による更新講習の修了が必要です。
- Q民間資格とは違う?
- A
航空法に沿って運用される国が発行する正式な国家資格です。従来のドローンスクールが発行する資格は、技能や知識を独自に評価した証明書にすぎません。
- Q国家資格がいる場合とは?
- A
カテゴリーⅢやカテゴリーⅡ(飛行許可・承認申請を省略したい)飛行をする場合のみです。国家資格取得に加えて、飛行させるには「型式認証・機体認証」された機体が必要など条件があります。
- Q空撮業務で国家資格はいる?
- A
現状は「一等」「二等」を問わず空撮業務で国家資格は必要ありません。取得したとしても「型式認証・機体認証」された機体がなく飛行させれません。従来通り国土交通省へ「飛行許可・承認申請」すればOKです。
- Q趣味での飛行で国家資格はいる?
- A
まったく必要ありません。従来通り国土交通省へ「飛行許可・承認申請」(個別申請)をすることで飛行させれます。
- Q技能証明申請者番号とは?
- A
DIPS2.0で取得できる数字10桁の番号です。試験を受ける時などに使用します。
- Q試験に落ち再試験をするときの費用は?
- A
試験を受験するたびに費用は発生します。
- Q免許はどのくらいで取得できる?
- A
登録講習機関に通った場合、指定試験機関で学科→身体検査→試験合格証明書取得までは最短15日です。これに加え、受験する前の申請、登録講習機関での座学や実技、技能証明書発行まで期間がかかります。
指定試験機関で一発試験を受ける場合には、学科→実地→身体検査→試験合格証明書取得まで最短1ヶ月かかります。これに加え、受験前の申請や技能証明書発行までの期間がかかります。
- Q試験費用の支払い方法は?
- A
指定講習機関の実地試験と身体検査は試験申込システムで支払い、「クレジットカード」「コンビニ払い」「銀行振り込み(バーチャル口座)」が選択可能。
学科試験はCBT運営会社の申込システムで支払い、「クレジットカード」「コンビニ払い」「Pay-easy払い」から選べます。登録講習機関での受講料はそれぞれ講習機関によって異なります。
- Q1日ですべての試験を受験可能?
- A
実地試験は学科試験を合格したあとにしか受験できません。学科試験の結果通知は8営業日かかるため、1日ですべてを受けることはできません。
- Q国外在住での試験は受験可能?
- A
国外に住んでいても受験することは可能です。ただし試験は日本国内でのみ行われます。
- Q試験合格証明書とは?
- A
国家資格(学科・実地・身体検査)に合格したことを指定試験機関が証明する書類になります。これがないと国土交通省へ「技能証明書(国家資格・免許)」を発行申請できません。
- Q学科試験合格後に実地試験に不合格だった場合、次回実地試験だけ受験可能?
- A
学科試験は合格日から2年間有効となり、有効期間内であれば実地試験のみ何度でも受験することは可能です。
- Q二等から一等を取得するときに免除になる項目は?
- A
学科試験と実地試験は免除になるものはありませんが、身体検査では有効期間内であれば新たに受検する必要はありません。(一等の機体重量25kg以上を除く)
- Q実地試験は何人くらいで受ける?
- A
会場やその時によって異なりますが、数名から10名程度です。
まとめ
無人航空機操縦者技能証明(国家資格)の制度を解説しました。
現状、空撮での飛行に関しては国家資格は一等・二等ともに必要ありません。取得しても「型式認証・機体認証」された機体もなく意味がないからです。これまで通り国土交通省(DIPS2.0)で飛行許可・承認申請をすることで問題ありません。