ドローンに関する規制は年々厳しく複雑になっています。
この記事では、これから新たにドローンを始める方に向けて、ドローン購入から実際に飛行させるまでにやるべき手順を最初からすべて解説していきます。
ドローンは法律やルールがとても複雑で、手順を省略すると知らずのうちに法律違反になってしまいますので注意しましょう!
ドローンの購入から実際に飛ばすまでのプロセスはたくさんあります。
飛ばす前にやらなければならない義務や守るべき規則が法律で決められていますので、最初から順番にやっていきましょう。
- 手順1
空撮用ドローンを購入します。おすすめはDJI社製。空撮用の機体はすべて重量100g以上の「無人航空機」になります。
- 手順2
購入したドローンを無人航空機登録ポータルサイトで登録。発行された登録記号を機体の見える位置に表示します。
- 手順3
航空法や小型無人機等飛行禁止法を含め、ドローンに関係する法律をすべて頭に入れて理解します。
- 手順4
航空法などに違反しない屋外や屋内練習場などで、飛行許可・承認の申請に必要な技能を習得、申請に必要な10時間以上の飛行実績を積みます。
- 手順5
DIPS 2.0を使用して国土交通省へ飛行許可・承認申請します。飛行予定の10日開庁日前までに申請する必要があります。
- 手順6
飛行させる前にDIPS 2.0から飛行計画の通報を行います。これを怠ると航空法違反になるため注意が必要です。
- 手順7
飛行場所が緊急用務空域に指定されていないか、公式ホームページや公式Twitterで飛行直前に確認します。
- 手順8
機体の点検等を行い実際に飛行させます。飛行の際は離陸時間や着陸時間などを飛行日誌に記録。事故や負傷者が出た際には適切な措置を取ります。
ドローンの購入
ドローンを始める第一歩として空撮用ドローンを購入します。
ドローンと言ってもさまざまな種類があり、間違ったものを買ってしまうと綺麗な映像を撮れませんので、最初のドローン選びは慎重に。
ざっくりドローンには3つの種類があります。
- 空撮用ドローン(撮影用ドローン)
- FPVドローン(撮影用ドローン)
- トイドローン(遊ぶ用のドローン)
安いからってトイドローン(おもちゃ)やFPVドローンを買わないように!
空撮用ドローンの選び方
空撮用ドローンの選ぶ基準は下記になります。
- カメラとジンバルが搭載されている
- 値段は最低でも10万円前後
- リモートID内蔵
- メーカーはDJI社
空撮で綺麗な映像を撮るにはカメラとジンバルが搭載されている必要があります。
ジンバルって何?
ジンバルとはブレを軽減させる装置のことで、これが搭載されていないとブレブレの映像しか撮れません。トイドローン(安いおもちゃドローン)にはカメラは付いていますが、この「ジンバル」が搭載されていませんので空撮では使い物になりません。
空撮用ドローンは基本的に10万円前後します。
10万円前後出せば、綺麗な4K映像を撮れて業務でも使えるドローンを買えます。より高品質な映像を求めるなら20〜100万円以上が必要です。
5万円以下のドローンはすべてトイドローンになるため購入の対象外!
あとはリモートIDを内蔵しているかどうか。航空法でリモートIDは義務化されているため、あらかじめリモートIDが内蔵されているドローンを購入しましょう。最近発売されたドローンにはリモートIDが内蔵されています。
空撮用ドローンはDJI社の一択です。ほかのメーカーも販売していますが、安全性やサポート体制が不安要素なため安易に購入するべきではありません。
おすすめの空撮用ドローン
DJI Mavic 3 | DJI Air 2S | DJI Mini 3 | |
対象 | 上級者 | 中級者 | 初心者 |
リモートID | 内蔵 | 内蔵 | 内蔵 |
値段 | 252,670円(Classic) 287,760円(Mavic 3) 699,600円(Cine) | 143,880円 (単体) 198,000円 (コンボ) | 79,750円 (RC-N1) 97,570円 (DJI RC) |
カメラ | 4/3型センサー F2.8-F11(絞り) | 1型センサー F2.8固定(絞り) | 1/1.3型センサー F1.7固定(絞り) |
画素数 | 20MP | 20MP | 12MP |
動画解像度 | 5.1K 50fps 4K 120fps | 5.4K 30fps 4K 120fps | 4K 30fps 2.7K 60fps |
静止画ファイル | JPEG/DNG(RAW) | JPEG/DNG(RAW) | JPEG/DNG(RAW) |
動画ビットレート | 200Mbps | 150Mbps | 100Mbps |
ISO | 100〜6400 | 100~6400 | 100〜3200 |
動画フォーマット | MP4/MOV (H.264/H.265) Apple ProPres (CINE) | MP4/MOV (H.264/H.265) | MP4 (H.264) |
カラーモード | Dlog-M (10bit) | Dlog-M (10bit) | ノーマル |
ストレージ | 8GB 1TB(Cine) | 8GB | なし |
飛行時間 | 46分 | 38〜51分 | 31分 |
耐風性能 | 12m/s | 10.7m/s | 10.7m/s |
障害物センサー | 全方向 | 前方・後方・ 上方・下方 | なし |
高品質な4K映像を撮影できるおすすめ空撮用ドローンが上記3機種です。
ドローンは「空飛ぶカメラ」ですのでカメラ性能=値段になります。
おすすめするドローンはそれぞれカメラ性能が異なるものです。初心者から上級者用まであるので、お財布と相談し、求める性能に合うドローンを購入しましょう。
性能によって値段が異なるのはミラーレス一眼カメラとまったく同じ!
DJI Mavic 3 Classic
すべての人におすすめするのが「DJI Mavic 3 Classic」です。
こちらはDJI社のフラグシップモデルとなり、プロの撮影現場でもっとも使用されている機体です。これ1台あればほとんどの仕事をこなせる素晴らしい機体になっています。
値段はそれなりにしますが、金銭的に余裕があるなら間違いなく「DJI Mavic 3 Classic」の購入をおすすめします。本気で映像撮影する人は買って損をしません。
センサーサイズは4/3型(マイクロフォーサーズ)。最大5.1K50fps/4K120fpsで撮影可能。動画は10bitのD-Log撮影ができ、写真は12bitのLAW写真を撮れます。
撮れる映像・写真のクオリティーはものすごく高く、プロからの評価も高い機体です。実際、映画やドラマ、PVもこのドローンで撮られています!
DJI Mavic 3には3種類の機体があります。
Mavic 3 Classic | 252,670円 | 望遠ズーム なし |
Mavic 3 | 287,760円 | 望遠ズーム あり |
Mavic 3 Cine | 699,600円 | 望遠ズームあり Apple ProRes収録可 (1TBのSSD内蔵) |
結論から言うと「DJI Mavic 3 Classic」を購入しましょう。
ほかの2機種と比べると望遠ズーム(162mm単焦点)が搭載されているかいないかの違いです。望遠ズームの使用頻度は限りなく少なく、ほとんどの人は使用しておらず不要です。
ものすごく高額なMavic 3 Cineは、Apple ProResで撮影可能な機体です。Apple ProResは細かいカラーグレーディング用で、映画を撮影する業者でないと必要ありません。趣味では必要ないですし、業務でも使う機会はほぼありません。
DJI Mavic 3の機体スペックやレビューは以下の記事に書いています。
【関連記事】「DJI Mavic 3」の性能スペックと実際に使用したレビュー
DJI Air 2S
趣味で飛ばしている人や仕事で飛ばす業者の「サブ機」として使用されているのがDJI Air 2Sです。
センサーサイズは1型CMOS。動画は4K60fpsで撮影でき、10bitのD-Logにも対応。数年前まで仕事の現場でもっとも使用されていた性能で、十分綺麗な絵を撮れます。
ひとつ欠点を挙げるなら絞りがF2.8の固定なことです。普段カメラをやっている人ならご存じですが、絞りを調整できないとNDフィルターを使用する必要があります。ただ、NDフィルターを使用すれば済む話なので、特別欠点とも言えません。
DJI Mavic 3などほかのドローンでもNDフィルターはほぼ必須です!
DJI Air 2Sは性能がよく、ものすごく綺麗な絵を撮れるわりに、値段がリーズナブルで非常にコストパフォーマンスに優れています。
綺麗な4K映像を撮りたいけど20万円なんて出せない…という人におすすめな機体。本当に映像は綺麗ですし、それで10万+αはお得ですよ!
DJI Mini 3
初めてドローンを買う初心者におすすめな機体です。
値段が10万円を下回る安さにもかかわらず、1/1.3インチセンサー搭載で、動画は4K60fpsで撮影可能という素晴らしい機体です。飛行時間も38〜51分でとても長いので、1回のフライトで満足する映像や写真を撮れます。
重量も248gと非常に軽く持ち運びに便利です。旅先などで撮影するには最適な機体!
ドローンは墜落する可能性も高いため、慣れていない段階では値段の安い機体を買うのは賢い選択です。4K撮影できるギリギリ最低ラインのドローンになります。経済的に厳しくても、綺麗な映像を撮りたいのでしたらこの機体は頑張って買いましょう!
旧世代の安いドローン
DJI Mini 3の購入も経済的に難しいのでしたら、数年前の機体ですがおすすめがあります。
- DJI Mini 2(税込59,400円)
(1/2.3インチCMOS、4K30fps/2.7K60fps、18分飛行)
こちらはDJI Mini 3のひとつ前の旧モデル。
DJI Mini 3よりもセンサーサイズが小さく飛行時間も短いですが、2万円ほど安く購入できます。DJI Mini 3が高くて購入できない初心者向けです。4K撮影できるため綺麗な映像は全然撮れます。
Mavic Miniはどう?
このひとつ前の世代の初代Mavic Miniはもっと安いですが、リモートIDが内蔵されていないため、これから購入するにはおすすめできません。
空撮するなら超最低限このDJI Mini 2になります!
購入する際の注意点
- バッテリーは最低2〜3本必要
- コンボセットで購入
- NDフィルターも購入
- 機体保険も同時に購入
最近のドローンはバッテリー1本分の飛行時間が長くなっていますが、空撮するうえでバッテリー1本では足りず、最低でも2〜3本は持っておきましょう。
購入するときにコンボセットで買うことでバッテリーが追加で1本か2本ついてきます。バッテリー1本&機体だけで買わず、必ずコンボセットで買うように。
また、機体保険として「DJI Care Refresh」というものがあります。こちらはドローンを墜落させて破損させたり紛失した場合に、安い値段で新品同様のものと交換してくれるものです。初心者は墜落させてしまう可能性が高いため、機体購入時に合わせて買いましょう。
機体登録・リモートIDの設定
重量100g以上のドローン(無人航空機)を屋外で飛行させる場合は機体登録が義務化されています。これは国土交通省へ飛行許可・承認申請をするか否かにかかわらず必要です。
機体登録を済ませ手数料の支払いが完了すると「登録記号」が発行されます。登録記号は車のナンバーみたいなもので、ドローン一台一台に割り振られる番号です。発行された登録記号は、機体の見える位置に貼り付けます。
最後に機体に内蔵されているリモートIDの設定もする必要があります。
やる順番は以下の通りです。
- 機体登録し登録記号を発行
- 登録記号を機体に貼り付ける
- DJI FlyアプリでリモートIDを設定
【関連記事】無人航空機の登録ハンドブック
機体を登録する
ドローンを購入したら無人航空機登録ポータルサイトで機体を登録させましょう。
①アカウント開設
氏名やメールアドレス、電話番号などの必要事項を入力。アカウント情報の読み取りにはマイナンバーカードも使用できます。(マイナンバーカードはなくても大丈夫)
②機体の登録
アカウント開設完了メールに記載されているIDとパスワードを使用し、無人航空機ポータルサイトにログインします。ログインしたら「新規登録」から機体の登録を行ってきます。
実際の登録の仕方は、上の動画ですべて解説されています!
③登録手数料の支払い
機体の登録後に届くメールに記載されているURLからログインし、そこから「支払い」を選んで手数料の支払いを済ませます。支払いが住むと「登録記号」が発行されます。
手数料は申請方法によって異なり、マイナンバーカードでの申請がもっとも安く1機900円。
登録記号を機体に貼り付ける
発行された登録記号を機体の表面にテプラ(シールやマジック)などを使用し見えるように表示します。この際、文字は3mm以上(機体の重量が25kg未満)の大きさにする必要があり、機体の色と同化してもいけません。
リモートIDを設定
近年発売されたDJI社製ドローンにはリモートIDが内蔵されているため(リモートID対応機種)、設定はアプリ「DJI Fly」で行うだけで済みます。
実際のリモートIDの設定方法は、DJI社が丁寧に画像付きで解説してくれていますので、そちらを見ながら行ってください。
ドローン購入から機体登録、登録番号の発行、機体に表示、リモートID設定、ここまで完了したらようやく次のステップへ行けます!
法律を理解する
ドローンに関する法律はたくさんあります。
知らずに違反してしまわないよう、飛ばす前にすべて頭に入れておきましょう。
ドローンは空を飛ばすため「航空法」だけかと思いきや、実は土地に関する法律も関わってきます。飛行場所を探すうえでも非常に重要になりますので要チェックです。
- 法律1航空法
操縦者がやらなければいけない義務や飛行場所・飛行方法に関して規制している法律です。ドローンを飛ばす上でもっとも重要になります。
- 法律2小型無人機等飛行禁止法
国の重要施設や一部の空港の上空とその周辺おおよそ300mの範囲は飛行禁止です。(例えば、国会議事堂や原発、自衛隊の基地など)
- 法律3民法
土地の所有者の権利は上空にも及ぶため、所有者や管理者の許可なく飛行させるのはNGとされています。たとえ許可承認を取得したとしても、どこでも飛ばしていいわけではないので注意が必要。
- 法律4個人情報保護法
撮影した映像や写真をネット上に公開する際には、第三者の顔や車のナンバープレートを隠すよう工夫が必要です。
- 法律5道路交通法
道路で作業・占有したりする場合には警察から「道路使用許可」が必要です。道路からドローンを離発着させたり立て看板を置いたりする行為がそれにあたります。道路の規模や警察の判断によりますので、道路で飛ばす際には警察へ確認しましょう。なお、道路上空を横切るだけなら道路使用許可は必要ありません。高速道路や交通量の多い一般道の周辺は飛行禁止です。
- 法律6重要文化財保護法
重要文化財を破損させたりすると法律で罰せられます。重要文化財やその周辺での飛行は禁止されていることもあるため、事前に管理者へ確認しましょう。
- 法律7電波法
DJI社製の空撮ドローンは2.4GHzを使用しているため電波法は気にする必要はありません。FPVドローンなど5.8GHzの周波数を使用する場合には、国家資格(アマチュア無線・陸上特殊無線技士)が必要です。
- 法律8都市公園法
公園でのドローン飛行はほとんどの公園で禁止されています。公園は飛行禁止と覚えておけばOKです。
- 法律9自然公園法
国立公園などでの飛行は自然公園法が関係してきますが、ドローンに関する記述はありません。基本的には飛行可能ですが、なかには飛行禁止だったりルールを設けている場所があるので要注意です。
- 法律10河川法
川での飛行は自由使用で基本的に飛行OKなところが多いです。しかし、都市部の河川は飛行禁止にしているケースも多いため、川で飛ばすときにも管理している部署に確認しましょう。
- 法律11海岸法
海岸でのドローン飛行は基本的にOKです。ただし海水浴場や潮干狩り会場などでは飛行禁止にしていることがあるので注意。こちらも飛行前に要確認です。
- 法律12海上交通安全法
海上での飛行は基本的に問題ありません。航行する船舶の安全を妨害する作業などをする場合には許可が必要になるケースもあります。
- 法律13港則法
港に近い海上に関する法律ですが、こちらも基本的に飛行可能です。ただし、重要港などでは飛行が禁止されていることもあるので、船舶の往来が多い港付近では事前に飛行可能かどうか確認しましょう。
- 法律14港湾法
港の施設などに関する法律です。港には管理者がいますので、勝手に飛行させるのはNGです。事前に飛行しても問題ないか確認しましょう。
- 法律15各都道府県・自治体の条例
各都道府県や自治体の条例に注意。公園での飛行は禁止されていることが多いですし、温泉周辺で飛行し「迷惑防止条例」にならないよう注意が必要です。
各法律の詳しい中身は以下の記事で徹底解説しています。
特に航空法では、操縦者の義務や禁止されている場所・飛行方法など、重要なルールが細かく決まっていますので、必ずすべてを理解する必要があります。
法律を遵守して練習
ドローンで空撮するには国土交通省へ「飛行許可・承認申請」をする必要があります。
申請を行うには10時間以上の飛行飛行実績が必要で、申請する前に法律を遵守しつつ自分で練習する必要があります。操作は八の字飛行ができるレベルの操作ができればOKです。
申請時に飛行時間や技能を証明する必要はないので安心してください。
練習を始めようとすると「どこで飛ばす?」の壁にぶち当たりますが、練習場所は主に以下2つがあります。
- 航空法や民法などに違反しない屋外
- 屋内練習場
航空法や民法などに違反しない屋外
まだ許可・承認がない状態なので、飛行場所は非常に限られます。
飛行可能な場所を探す方法は以下の通り。
- 空港周辺ではない
- 人工集中地区(DID地区)ではない
- 国の重要施設周辺ではない
- 周囲30m以内に人や物件がない場所
- 土地の所有者・管理者の許可を得てる
- その他法律に違反しない場所
都市部にこのような場所は見当たらず、地方でも探すのはなかなか大変です。
上記に当たらない場所の例としては山奥や広い河原などがあります。どの山にも所有者はいますし、河原にも管理している部署があるため、飛行前の電話確認は必要です。
飛行前には国土交通省の公式ホームページか公式Twitterで「緊急用務空域」でないことを確認してから飛ばしましょう!
屋内練習場
都市部に住んでいる方のおすすめ練習場所は屋内練習場で、屋内は航空法が適用されないため自由に飛ばせます。
デメリットとして挙げられるのは以下2つ。
- 利用料金が発生する
- すぐに飽きてしまう
屋内練習場は時間単位、1日単位で利用できます。屋外で法律に違反しない場所で飛ばせば無料なのに、数千円のお金が掛かるのはデメリットです。ただ、屋内練習場は電源が使える場所が多く、10時間を達成するにはもってこいの環境。
もうひとつのデメリットは、狭い空間で飛ばすことになるためすぐに飽きることです。最初の頃は飽きずに楽しめますが、慣れてくると退屈になります。こればかりは10時間飛ばすまでは我慢するしかないですね。
都市部に住んでいるなら、気軽に10時間以上の飛行ができ簡単な技能が身に付く屋内練習場しか選択肢はないですね!
国土交通省へ飛行・許可承認申請
航空法で禁止されている場所や飛行方法で飛ばす場合(特定飛行)には、国土交通省へ「飛行許可・承認申請」をする必要があります。
- 禁止されている飛行空域(特定飛行)
・地水表面から上空150m以上の空域
・空港等の周辺の空域
・人口集中地区(DID地区)
・緊急用務空域
- 禁止されている飛行方法(特定飛行)
・夜間飛行
・目視外飛行
・人や物件から30m離れていない飛行
・イベント会場上空での飛行
・危険物の輸送
・物件投下
映像を撮影するにあたり、少なくとも「目視外飛行」や「人や物件から30m離れていない飛行」を行うため、事実上、国土交通省への飛行許可・承認申請は必須なのです。
飛行許可・承認申請する
申請は「ドローン情報基盤システム(DIPS2.0)」で行います。審査には時間がかかるため、飛行開始予定日の少なくとも10開庁日以上前に申請する必要があります。
国土交通省が開いている日で10日以上前です。休日・祝日は入らないので、2週間以上前までに申請する必要があるということです!
申請方法に関しては、実際に画面付きで国土交通省が用意してくれていますので、以下の記事を参考にしながら登録しましょう。
ドローン情報基盤システム操作マニュアル(飛行許可・承認申請編)
マニュアルの内容を理解しておく
申請する際に飛行マニュアルを選択しますが、あらかじめ用意されている「航空局標準マニュアル」を使用する場合は中身は熟読しておきましょう。
たとえ許可承認を得たとしても、このマニュアルの内容に沿った運用が必要で、意外と厳しい条件がついています。例えば、包括申請で使用する航空局標準マニュアル02では以下のよう飛ばし方は禁止されています。
- 風速5m/s以上では飛行させない
- 雨の場合や雨になりそうな場合は飛行させない
- 十分な視程が確保できない雲や霧の中では飛行させない
- 第三者の立入りを制限できない場合、補助者を必要人数配置
- 第三者の往来が多い場所(学校、病院、神社仏閣、観光施設など)の上空やその付近は飛行させない(依頼があり補助者の増員等行えば可能)
- 高速道路や交通量が多い一般道、鉄道の上空やその付近では飛行させない
- 高圧線、変電所、電波塔、無線施設などの施設上空及び付近では飛行させない(点検等で補助者の増員等行えば可能)
上記の条件を守って飛ばす必要があります。
風速5m/s以上は飛ばせないなど厳しい内容です。もし風速5m/s以上で飛ばしたいなら、自ら作成した「独自マニュアル」で申請します。
独自マニュアルで風速の箇所を変更する方法
航空局標準マニュアルの風速に関する箇所を以下の文言に変更すればOKです。
「メーカーが定めた風速抵抗値を超える状態、もしくはメーカーが定めた風速抵抗値を超えることが予想される状態では飛行させない。」
「航空局標準マニュアル02」は更新されそのままでも使いやすくなりましたが、風速の箇所は変更したほうがさらに使いやすいです!
国家資格は必要ないの?
- カテゴリーの解説
- ✅カテゴリーⅠ
特定飛行(航空法で禁止されている飛行場所・飛行方法)をしない飛行方法で、国土交通省へ飛行許可・承認申請は必要なく、国家資格も必要ありません。
✅カテゴリーⅡ
特定飛行を行うも第三者の上空を飛行させない(立入制限を行う)飛ばし方で、現状は国土交通省へ飛行許可・承認申請が必要。今後は国家資格(二等資格)を取得し機体認証を受けた機体で飛ばす場合には申請が免除されます。
✅カテゴリーⅢ
立入制限を行わず(第三者の上空を飛行)特定飛行をする場合には、国家資格のなかでも一等資格が必要です。一等資格を取得しても機体認証を受けた機体を使用したうえで、国土交通省へ飛行許可・承認申請が必要。
国家資格には「一等」と「二等」があります。
- 一等無人航空機操縦士:カテゴリーⅢ
- 二等無人航空機操縦士:カテゴリーⅡ
一等無人航空機操縦士
一等資格は立入管理措置を講じない場合の飛行(カテゴリーⅢ)が可能になります。つまり第三者の上空を特定飛行で飛ばす飛ばし方です。2022年12月5日以前は飛行が認められていませんでしたが、国家資格ができたことで飛行可能になりました。
一等資格を持っている者が第一種機体認証を受けたドローンで飛ばす際、このカテゴリーⅢの立入管理措置を講じない場合の飛行が可能になるのです。
一等資格は物流など完全に業務用の資格。空撮では必要ありませんので取得する必要はありません!
二等無人航空機操縦士
二等資格は空撮する人にも関係してきます。
以下の特定飛行をするには国土交通省へ「飛行許可・承認申請」をする必要があります。
- 人口集中地区(DID地区)での飛行
- 夜間飛行
- 目視外飛行
- 人や物件から30m未満の飛行
しかし、二等資格を所持している人が第二種機体以上の機体で飛ばす際には、これまで必要だった国土交通省への「飛行許可・承認申請」を省略できるのです。
これまで申請が必要だったものが、二等資格を所持していることで申請の必要がなくなるということ!
ただし、この二等資格ですがいますぐ取得しても意味がありません。
申請を省略するには、二等資格を取得するのと同時に飛行させる機体は国土交通省の機体認証をパスしたものだけです。現段階において第二種機体認証を受けたドローンは存在しないことから、いま資格を取っても意味がないのです。
空撮に国家資格の取得は必要?
少なくとも現段階では必要ありません。理由は第二種機体認証を受けた機体がないからです。今後、普段使用しているドローンが第二種機体認証を受ければ、二等資格を取得することでDIPSにて申請する必要はなくなります。
飛行計画を通報
いざ飛行する前に飛行計画を通報することが義務付けられています。
目的はほかのドローンとの接触を避けるため。通報は「ドローン情報基盤システム(DIPS2.0)」で行い、飛行場所や飛行時間、操縦者、使用機体などを入力します。
停電やシステム改修でサイトを利用できない場合には、以下のメールアドレスに特定の様式で飛行情報を記入して送ります。
提出先 | hqt-jcab_uav@mlit.go.jp (国土交通省航空局安全部課無人機安全課) |
様式 | 無人航空機に係る飛行予定情報報告 (エクセル) |
飛行前の面倒な作業ですが、これを怠ると航空法違反になります!
緊急用務空域か確認
飛行直前、飛ばす空域が「緊急用務空域」になっていないか確認します。
緊急用務空域とは、緊急用務を行うため有人機の飛行が想定される場合にあらかじめその空域を飛行禁止にするものです。突然指定されるため、飛行前に必ず確認する必要あり。
例えば、山火事が起きて消化のためにヘリが飛ぶのに、ドローンが飛んでたら邪魔になるから飛行禁止にしよう、というものです。
確認方法は以下の2つです。
飛行開始から飛行終了までの流れ
ドローンを飛ばす時には飛行前・飛行中・飛行後で常にやることがあります。
飛行前は点検や確認、飛行中は状況把握、飛行後は点検や日誌作成など。
飛行前の点検・確認作業
飛行前には以下のことを行います。
- 機体の点検
- 緊急用務空域の確認
- 飛行空域やその周辺の確認
飛行前には入念の準備が必要です。
まずは機体の点検。ネジの緩みやプロペラが正しく装着されているかなどを確認します。事故に繋がるので点検は毎回しっかり行いましょう。
緊急用務空域がどうかもTwitterか公式ホームページで確認します。指定されていなけば、飛行空域やその周辺の空域、離発着する場所の安全を確認、すべて問題なければいざ離陸させます。
離陸させるときには離陸時間をメモしておきましょう!
飛行中に注意すべき点
飛行中は常に機体の状態と飛行空域の状況確認が大事です。
補助者と役割分担し、補助者は主に目視して機体や周囲の状況を確認。操縦者は目視とモニターで機体の状態をリアルタイムで把握。
- 鳥などの飛行物体に注意
- 見えない進行方向の障害物に注意
- 風の状況に注意
飛行中は鳥がドローンを襲ってくることがあり、墜落の原因になります。鳥が飛んでいる場合には、飛行を中止するか、小型ドローンを飛ばさないことで事故を減らせます。
空撮するのに目視外飛行する際、後進や横移動、ノーズインサークルなどは進行方向が見えないので要注意です。障害物センサーが搭載されていても、センサーが障害物を感知してくれないことも多いです。
目視外飛行中の事故は多いので、補助者に常時監視してもらいましょう!
強風時の飛行は注意しないとドローンが未帰還になります。
モニターに表示されているバッテリー残量や残り時間はあくまで目安であり、帰還時に向かい風だと戻ってこれないケースが多々あります。未帰還を避けるため、なるべく余裕を持って帰還させることが大事です。(バッテリー残量30%以上で帰還させるのが望ましい)
飛行中の墜落原因・事故防止に関しては以下の記事にまとめていますので参考に。
飛行後は飛行日誌の作成
- 着陸時間をメモ
- 機体をチェック
- 飛行日誌を作成
着陸させたらすぐに着陸時間をメモします。
機体のネジやプロペラが正常か確認し、問題なければ片付けて撤収。
現場でやっても問題ないですが、飛行日誌の作成が必要です。飛行日誌は義務化されているため、怠ると航空法違反になります。必ず1フライトごとに飛行日誌を作成しましょう。
ちなみに、1フライトはバッテリーを交換するごとです。電源をON/OFFしたら1回のフライトとしてカウントされます。一度帰還させ電源をOFFにすることなく再び飛ばしたら、それは1回のフライトとして記録。一度帰還させ新しいバッテリーに交換、再び離陸させればそれは2回目のフライトとしてカウントされます。
離陸時間や着陸時間などは1分単位での記録が必要になります!
ドローンを始める際のよくある質問
- Qドローンスクールに通う必要あるの?
- A
通う必要はありません。国家資格を取りたい方やお金を払って知識や技能を身につけたい方は通うのもアリです。ただ受講料が高いため、趣味などで飛行する場合には独学で全然OKです。技能は実際に飛行させて練習を積み、知識はドローンの本で充分です。
- Q国家資格はいるの?
- A
国家資格は現状必要ありません。第三者の上空で補助者なし飛行する場合など国家資格(一等資格)が必要ですし、飛行許可・承認申請を省略するには二等資格が必要です。まだ認証された機体がないため、国家資格を取得しても意味がありません。
ただし、今後認証される機体が増えていけば、国家資格を持っていることで業務では信頼性が増したり、案件を受注しやすくなったりするメリットは出てきます。
- Q国土交通省へ申請せずに飛ばせないの?
- A
航空法に違反しなければ申請なしでも飛行可能です。
禁止の飛行場所:150m以上、DID地区、空港周辺
禁止の飛行方法:目視外飛行、夜間飛行、30m以内に人や物件、イベント会場、物件投下、危険物輸送空撮する際にはいくつかの項目に該当するため、申請はほぼ必須と言えます。
- Qドローンを購入したらまず何をすればいい?
- A
購入したら機体登録をしましょう。登録は無人航空機登録ポータルサイトで行えます。
- Q飛行許可・承認を得たらどこを飛ばしてもいいの?
- A
どこでも飛ばせるわけではありません。飛ばす土地の許可を得た場所でのみ飛行可能です。どの土地にも所有者や管理者がいるため、必ず許可を取ったうえで飛行させましょう。
まとめ
ドローンの購入から実際に飛行させるまでの手順を解説しました。
法律が複雑なため順番にやっていかないと知らずに違反してしまう可能性もあります。手順一覧を見て最初から順番にやっていきましょう。
- 手順1
空撮用ドローンを購入します。おすすめはDJI社製。空撮用の機体はすべて重量100g以上の「無人航空機」になります。
- 手順2
購入したドローンを無人航空機登録ポータルサイトで登録。発行された登録番号を機体の見える位置に表示します。
- 手順3
航空法や小型無人機等飛行禁止法を含め、ドローンに関係する法律をすべて頭に入れて理解します。
- 手順4
航空法などに違反しない屋外や屋内練習場などで、飛行許可・承認の申請に必要な技能を習得、申請に必要な10時間以上の飛行実績を積みます。
- 手順5
DIPS 2.0を使用して国土交通省へ飛行許可・承認申請します。飛行予定の10日開庁日前までに申請する必要があります。
- 手順6
飛行させる前にDIPS 2.0から飛行計画の通報を行います。これを怠ると航空法違反になるため注意が必要です。
- 手順7
飛行場所が緊急用務空域に指定されていないか、公式ホームページや公式Twitterで飛行直前に確認します。
- 手順8
機体の点検等を行い実際に飛行させます。飛行の際は離陸時間や着陸時間などを飛行日誌に記録。事故や負傷者が出た際には適切な措置を取ります。