事実上、日本でドローンを飛ばすには国土交通省の許可ないと飛ばすことができません。
いま販売されている多くのドローンにはGPS機能が備わっており、舵を入れなくても自動的にホバリングしてくれ、初心者でも簡単に飛ばせるのですが、意外と航空法を厳密に守ると飛ばせるところは少ないです。
また、たとえ航空法的にOKだったとしても、どの土地にも所有者が必ずいるものでして、その許可も取る必要がありますので、許可なく飛ばせる場所はないに等しいのです…。
今回は、ドローンを飛行するために必要不可欠な「包括申請」と呼ばれるものについて紹介、そしてネット上(DIPS)での申請の仕方について書いていきたいと思います。
航空法の許可申請
航空法を全て紹介するのはここでは控えますが、以下の規制があるため飛ばせる場所が限定されてしまっています。
・人口集中地区(DID地区)
・30m以内に人・物件がある
当たり前ですが、人が住んでいる場所の多くは人口集中地区(DID地区)に指定されていますので、この地域で許可なく飛ばすことができません。
また、飛行させる30m以内に人がいたり物(電柱やガードレール等を含む人工物)があったりする場所でも飛ばすことができません。
特にこの「30m以内に人がいたり物があると飛ばせない」というのがなかなか厳しくて、これを厳密に守ると飛ばせるところは本当に見つからないんですよね。
よって、多くの方はこの2つの許可申請を国土交通省にするわけですが、これら複数の許可をまとめて取れる申請というのがいわゆる「包括申請」というものになります。
包括申請について
例えば、
・人口集中地区で飛ばしたい
・30m以内に人・物がある場所で飛ばしたい
・目視しないで飛ばしたい
・夜間に飛ばしたい
など本来規制があって飛ばせない場所や方法で飛ばしたい場合に、国土交通省に許可を取れば飛ばすことができるようになります。
また、許可を取る際に「どこで飛ばすのか」や「期間はいつか」もあらかじめ設定する必要がありまして、多くの方は日本全国で1年間という条件のもと包括申請をしています。
まとめると、多くの方が申請したい内容は以下の通り。
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申請内容
・航空法第132条第2号
(DID地区 / 人口集中地区)・航空法第132条の2 第1号
(夜間飛行)・航空法第132条の2 第2号
(目視外飛行)・航空法第132条の2 第3号
(人や物件から30m未満)[/wc_column]
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条件
・飛行場所を定めず日本全国
・日時を定めず「1年間」
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上記を申請し、無事に許可が下りれば少しはドローンを飛ばす上での自由度は増します。つまり、本来禁止されている場所や方法で飛ばすことが可能になるということです。
ネット上のDIPSから包括申請
ここからは2018年4月から開始された、国土交通省が提供するネット上のDIPS(Drone/UAS Information Platform System)での包括申請の仕方について紹介していきたいと思います。
ここでは、DJI社製のドローンMavic 2(Zoom)で申請していきますが、DJI社製の類似機種であれば申請の仕方はほとんど同じになりますので、参考になります。
また、すでにDIPSでアカウント開設し、ドローンと操縦者の登録を済ませている前提で書いていきますので、まずはDIPS公式ホームページからアカウントを開設し、申請するドローンと操縦者の登録をしましょう。
いざ包括申請!
DIPSにログインしたら、「申請書の作成(新規)」をクリックします。
ここから申請書のほうを作成していきます。
最初は慣れないため、完了するまで時間を多少要するかもしれませんが、一度慣れてしまえば簡単にできるようになってしまいます!
まずは「飛行の目的」を選ぶことになりますが、空撮目的で「包括申請」をする場合には業務の「空撮」の欄にチェックを入れます。
その下の業務以外のところに「趣味」の欄がありますが、残念ながら包括申請は趣味では許可が下りませんので、そこは注意が必要です。
ここからは申請する具体的な項目を入力していきます。
まずは人口集中地区(DID地区)で飛行させるための項目「人・家屋の密集地域の上空」の欄にチェックを入れます。
そして、隣の「飛行理由」にはブルダウンから適当なものを選びましょう。
残りの2つの項目は「150m以上を飛行させる場合」や「空港周辺で飛行させる場合」に申請するもので、基本的にこちらの条件は包括申請では下りませんので、ここでは必要ありません。
なぜか「空域を管轄する関係機関」という欄を入力しないと先へ進めないようになっていますので、「調整機関名/調査結果」の欄には「調整なし」と入力しましょう。
そして、包括申請する他の項目、
・人・物件から30m未満の距離
・夜間の飛行
・目視外での飛行
の3つの欄にチェックを入れ、隣の飛行理由はプルダウンから適切なものを選びましょう。
ちなみに、「夜間の飛行」は申請しない場合など、申請する必要がない項目にはチェックを入れる必要はありませんので、あくまで申請したい項目だけチェックしましょう。
続けて、期間を入力するわけですが、多くの方は1年間通しての許可が必要だと思いますので、その場合は「年間を通じて飛行しますか?」の欄は「はい」を選択。
「飛行する期間を入力」の欄には、許可はいつから1年間有効にしたいのかを選択します。なお、申請には飛行予定日の10開庁日前(平日10日前)までに提出する必要がありますので、申請できるのは今記入している日から平日で10日後以降となります。
そして飛行する場所ですが、おそらく地域を限定せず日本全国で飛行させたい方が多いと思いますので、その場合には「特定の場所・経路で飛行しない」にチェックを入れて「次へ進む」をクリックします。
「飛行が想定される範囲はどこですか?」は日本全国を選択。
選択すると「飛行するための条件(安全面への配慮など)」を記入する必要がありますので、そこにはどのように飛行の際の安全を確保するのかを入力します。(鳥や電線等、飛ばす際には必ず周囲の状況を確認する…など)
そして申請する場所として、東京に近い方であれば東京航空局、大阪に近ければ大阪航空局にチェックを入れればOKです!
終わったら「次へ進む」をクリック。
続いては機体を選択しますので、赤で囲っている「機体選択」をクリック。
まず緑色の「機体追加」を押すと、すでに登録している機体が表示されますのでそれを選びます。
「人・物件から30m以内で飛ばす…」の許可申請する方は、「追加基準」の欄をクリック。(そのまま「登録する」を押しても「条件を満たしてません…」のような注意文言が出ます)
Mavic 2で「人・物件から30m未満で飛ばす」場合には、追加基準適合を入力する必要があります。
まずは「物件に接触した際の危害を軽減する構造を有すること」の欄ですが、こちらはプロペラガードを装着して飛行させるの欄をチェック!
つまり、万が一物件などに接触してしまった際に被害を軽減するために、プロペラガードを装着しておけばOKということになります。
そして、プロペラガードを装着しているかどうかの証拠写真が必要になりますので、実際にMavic 2の機体にプロペラガードを装着されている写真を撮り、そちらを添付する必要があります。(参照をクリックすると保存している写真データを選べます)
次の項目は、要するに「目視外飛行」での基準を満たしているかどうかの項目です。
Mavic 2で申請する場合には2番目の「機体に設定されたカメラ等により機体の外の様子を監視できる。自動操縦システムは装備していないが、補助者が常に飛行状況や周囲の状況を監視し、操縦者に必要な助言を行うことで安全を確保する」の欄にチェックを入れます。
(Mavic 2 は現時点で自動操縦システムを装備していません)
続けて、ドローンのカメラの映像が手元のプロポ(スマホやタブレット)にしっかり表示されているかどうかの写真を添付する必要がありますので、実際にドローンを飛ばして、スマホやタブレットにカメラの映像が映っている写真をスクリーンショットなどで撮って添付しましょう。
次はドローンに何か異常が発生した時に、プロポ画面(手元のスマホやタブレット)にその異常等が確認できる写真を添付する必要があります。(例えばバッテリー残量が少ないとか、強風注意とか…)
実際に飛ばして、ちょうど警告などが表示されている時にスクリーンショットなどをして、それを添付すればOKです。
チェックを入れるのは「プロポの画面において機体の位置及び異常の有無等を把握できる」の欄。
続いてはトラブルがあった時に、ドローンの自動帰還機能が正常に作動しているかを証明する写真を添付する必要があります。こちらも実際に飛ばしてみて自動帰還機能(フェールセール機能)を実施、作動している画面をスクリーンショットして添付すれば大丈夫です。
チェックを入れるのは上の画像の通り。
全てチェックして写真を添付し終えたら、右下の「登録する」をクリックします。
戻ったら今度は「操縦者選択」をクリック。
「操縦者追加」を選択して、すでに登録してある自分の名前を選択します。
選択して上の写真のように操縦者名と機体情報が表示されたら、そのまま右下の「登録する」をクリック。
次は「使用する飛行マニュアル」の選択。
・航空局標準マニュアルを使用
・民間団体等標準マニュアル
・その他のマニュアル
上記3つの中から選ぶ必要があります。
この飛行マニュアルとは、いわゆる飛行する際の「説明書」でして、その説明書に載っていることを守って飛行させますよというものです。
すでに航空局が用意している標準マニュアルを選ぶのも良し、難易度は高いですが独自でマニュアルを作成するのも良し(審査は大変です…)ということですが、包括申請をするほとんどの方は「航空局標準マニュアル」を選んでいる現状があります。
ただし、航空局標準マニュアルを使用して許可申請する際には注意すべき点が多々あり、ほとんどの方はこのマニュアルを一度も読まないで、ただ選んで申請してしまっているため、内容を知らない方が多いのです。
航空局標準マニュアルはこちら(←必読です)
このマニュアルの中で注目したいのが以下の点になります。
・飛行する際は許可書やその写しを携帯
・第三者のいる上空では飛ばさない
・風速5m/s以上では飛ばさない
・低空飛行や高調音を発する飛行、急降下は禁止
・雨の場合や雨になりそうな場合は飛ばさない
・雲や霧の中では飛ばさない
・補助者を配置し、相互に安全確認を行う
・第三者の往来が多い場所や学校、病院等の上空は飛ばさない
・高速道路、交通量が多い一般道、鉄道の上空やその付近では飛ばさない
・高圧線、変電所、電波塔及び無線施設等の施設付近では飛ばさない
・公園、河川、港湾等で飛行させる場合には管理者に確認
・人口集中地区(DID地区)の上空では夜間飛行は行わない。
・人口集中地区(DID地区)の上空では目視外飛行は行わない。
・夜間の目視外飛行は行わない。
・双眼鏡等を有する補助者のもと、目視外飛行を実施する
・補助者についても、無人航空機の特性を十分理解している必要あり
さて、上記を見てどう感じるでしょうか?笑
風速5m/s以上は飛ばせませんし、霧や雲の中もダメ。学校や病院付近や高速道路や高圧線がある場所でも飛ばせません。
また、補助者を配置する必要があり、その補助者にもドローン知識がないとダメ。
極めつけは、たとえ「人口集中地区での飛行」「夜間飛行」「目視外飛行」の全ての許可を持っていたとしても、人口集中地区では夜間に飛ばせませんし目視外飛行はできません。さらに、夜間はどこで飛ばそうが目視外飛行はできません。
つまりですね…笑
航空局標準マニュアルで包括申請をしたとしても、ほとんど飛ばせないんですよね^^
まず、1人じゃ飛ばせないことになりますし、人口集中地区で目視外飛行してもダメです…。
包括申請するほとんどの方は、この航空局標準マニュアルで申請しているわけですけど、これ守っていない人が大半だと思われます・・・。って言いますか、そもそもこのマニュアルを読んでいないと思います。
いや〜厳しい!
もしこれらの禁止されている方法で飛行させたいのなら、独自でマニュアルを作成する必要があります。
ただし、すでに紹介したように審査は格段と厳しくなり、例えば、人口集中地区で目視外飛行をしたい場合には、許可する代わりにどのような安全策を講じるのか等も書かなければ、当たり前ですが許可は下りません!
ネット上には、包括申請のやり方が書かれているサイトは多数ありますが、このマニュアルに触れているサイトはほとんどありません。よって、許可をもらった人はやりたい放題なのが現状です…。
ということで、航空局標準マニュアルの内容を了承した方は、そちらを選択して先へ進みましょう!
続いては保険関係の入力になります。
申請する際には保険に加入している必要がありますので、まずは加入しましょう!(DJI社にも保険があります)
加入しましたら(保険)商品名や補償金額を入力。
緊急連絡先を確認して、受け取る許可証の形式を選びます。電子許可証を発行しておけば、それをスマホなどに入れておけますので便利ですね。
選び終えたら「次へ進む」をクリックします。
これで全ての申請事項の入力が完了となりますので、最後に確認をして「申請書の内容は間違いありませんか?」の欄にチェックを入れ、「申請する」をクリック。
これで申請は終了となります。
許可証の発行はEメールで通知
申請書が許可されると許可証が発行され、その旨がEメールで届きます。
無事に許可が下りれば、そのままDIPSにログインすると許可証(電子)を確認できますし、もし申請書に不備や訂正等があればその旨の連絡がEメールにきます。
その場合は再びDIPSにログインし、指摘があった箇所を訂正して再度申請する流れとなります。
国土交通省(航空局を含む)は大変忙しいようで、申請したとしても直ぐには許可は下りず、しばらく時間が掛かることは覚悟しておいたほうがいいですね。ただ、もちろん平日10日以内にはEメールが届くはずです。
3ヶ月ごとに報告作業が必要
無事に包括申請を終えたとしてもやることがあります!
それは1年間で取得した場合には、3ヶ月ごとに飛行状況をDIPSにて報告する必要があるのです。
えぇ、これがまた面倒くさい^^;
先程、航空局マニュアルのURLを載せましたが、ページの一番下に「無人航空機の飛行記録」というものがありまして、そこに記入する形で3ヶ月ごとに報告しなければなりません。
飛行させた日時、操縦者名、飛行概要、飛行させたドローン名、離発着の場所、その時刻、総飛行時間など、包括申請した方は毎回飛行させる度にこれらをメモっておく必要がありますので、忘れないようにしましょう!
すべて記入し終えたらexcel形式にて提出。
また、これらにプラスして飛行させた経路の地図も同時に添付する必要がありますので、そのことも忘れないように。
地図は地理院地図を使うと良いと思います。
この地図上に、Photoshopなどを使って飛行させた範囲を赤線の四角で囲めばOKです。
ここで注意すべきポイントは、同じ場所の地図でも
「広範囲の地図」
と、より拡大した
「詳細な地図」
の2つに赤線で囲み、その両方を提出することです。
詳細地図のほうは最大限拡大し、具体的にどこを飛行したのか分かるように赤線で囲みましょう。
そして2つの地図が揃ったら、それらを1つのページに貼り付けて提出。
飛行場所が複数ある場合は、全ての地図を整理して同じページに分かりやすく貼り付け、その貼り付けたページを提出することになります。
まとめ
DIPSでの包括申請のやり方について紹介しました。
ネット上で申請できるようになったこともあって、以前と比べると申請の難易度は格段に下がりました。
上記を参考にしてもらえば簡単に出来ますし、一度自分で申請すればその後は見ずに出来るようになりますので、ぜひ包括申請を検討している方は行政書士などに頼まず、自分でやることをお勧めします!
(そのほうが知識も身につきます)
【参考】申請する上でしっかり知識を身につける!
申請するのに知識や技能を証明する必要はないのですが、申請するのであれば間違いなく基礎知識は頭に入れておく必要があります。
そこで、こちらの本はDJI CAMP(認定証を発行してくれる講習)で実際に使われている実用的な本になっていまして、DJI CAMPに参加される方は必ず勉強する本になりますので、この本さえ読んでおけばとりあえず知識系に関しては十分ですのでおすすめです。
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