四国カルストの奥深くに「猪伏の大トチ」と呼ばれる巨木があります。
ここは9割以上の人が知らない超マイナースポット。
樹齢600年を超え、全国でも指折りの大きさを誇る一本の巨木。愛媛県で唯一「森の巨人たち百選」に選ばれていることから、地元民の誇りになっているのだとか。
今回はそんな巨木をドローンで撮影してきました。
「猪伏の大トチ」でドローンは飛ばせる?

「猪伏の大トチ」ではドローンを飛ばせます。
ただし、このあたり一帯は国有林になっているため、ドローンを飛ばすなら入林届の提出が必要です。
下記メールアドレス宛に1週間前までに入林届を提出。
提出先 | 愛媛森林管理署 |
Eメール | shikoku_ehime@maff.go.jp |
電話番号 | 089-924-0550 |
航空法については、DID地区(人口集中地区)には該当していません。しかし、周辺に木材でつくられた看板があり「物件」に該当しますので「30m以内に人や物件」の飛行許可申請等は必要です。
「猪伏の大トチ」のドローン空撮映像
巨木をドローンで撮る。
ドローンは上空から撮るだけの道具だと思われがちですが、わずかな空間さえあればどこでも飛ばすことができる便利なものです。巨木のまわりは空間があるのでそこで飛ばせる。
低空で飛ばし、カメラのチルトを上げて、見上げるようにして撮るのもいいですし、巨木に接近して撮るのも迫力が出る。わずかな空間があるだけで、地上カメラでは決して撮ることのできない絵が撮れてしまうのがドローンの魅力です。
もちろん狭い空間で飛ばすには、繊細な操作技術があることが前提。ミスをすれば衝突して墜落させてしまう可能性があります。しかし繊細な操作ができるようになれば、撮れる映像の幅が広がりますし、どこでも飛ばせるようになるので単純に楽しいです。ドローンの本当の楽しさは、繊細な操作ができるようになり、わずかな空間でも飛ばせるようになってから。
今回の「猪伏の大トチ」では、まわりが一部伐採されていることもあって、予想よりも空間が広かったです。しかも、空は木々に覆われておらず上空へ抜けられる。これだけの空間があればさまざまなカットを撮れます。
しかし映像ではその場の雰囲気や存在感、そして大きさは伝わりづらいことも事実なので、やはり実際に自分の目で見てみることが大事です。
狭い空間では広角が必須

飛ばせる空間があるとはいえ、被写体となる巨木からそこまで下がれるわけではないので、やはり広角が必要になってきます。
今回撮影に使用したのはDJI Mavic 3の広角24mm。画角に関しては24mmで十分でした。
今回は使用していませんが、別売りの超広角レンズ15.5mmも大活躍する現場です。普段はあまり使う機会がない代物ですが、このような狭い空間では本領発揮してくれ、かなりおもしろい絵が撮れるはず。
そして、ここでふと思ったのがDJI Mavic 4。
画角は28mmと狭い。実際に撮影した映像を見てみると、24mmと28mmとでは大きな差があります。風景撮影ではそこまで気にならなくても、このような狭い空間で撮ってみると如実に違いが出てきます。
正直なところ、このような現場で28mmはあまりに画角が狭すぎる。そういう意味では、DJI Mavic 4は用途が限られるといいますか、広い景色を撮ったりするには最高ですが、限られた環境で撮影するような場所には不向きと言わざるを得ません。
チルト上向き最大70°がほしい

実際に撮影してみるとわかるのですが、巨木って上空から撮っても映えません。
どれも似た木に見えてしまい、まわりにある木と比べても違いが伝わりづらい。
やはり大きな木を写すには、地面近くから見上げるようにして撮るのが一番。木の幹や枝、その存在感を含め、木の下から撮ると伝わりやすいです。そのようなカットは地上カメラでも撮れるわけですが、低空を直線的に滑らかに撮れるのがドローンの大きなメリット。
ドローンのカメラの角度(チルト)を上げて、木を中心に捉えてまわりを旋回すると、その大きさが伝わります。そして、ここで大事になってくるのがチルトの上向き角度。
今回、DJI Mavic 3で撮影したわけですが、正直なところ物足りなかったというのが本音。予想以上にチルトがあがらないことに困りました。このせいで思ったような絵が撮れず。もっと見上げるようにして木の全体を入れたかった…。
DJI Mavic 3では上向き最大35°まで上げられますが、35°では全然足りません。
そこでDJI Mavic 4の出番。
こちらはなんと上向き最大70°まで上げることができます。DJI Mavic 3の2倍も上向きにできるようになったことから、これは今回のような環境では重宝します。ほぼ真上を向けられるため、このような巨木でもしっかり画角におさめることができるのです。
このとき初めてDJI Mavic 4の必要性を感じたわけですが、しかし一方で、すでに書いた画角が28mmと狭いことが致命的でもあります。もしこれで24mmだったら文句なしの機体だったのですが、とても惜しい機体と言わざるを得ません。
ドローンはさまざまな場所で飛ばしますから、可能な限りたくさんの選択肢が選べる機体を持っておいたほうがいいです。ほとんど誤差のような性能向上であったとしても、チルト最大35°から70°の向上というのは、こういう現場ではとても大きな差になりますからね。
「猪伏の大トチ」までのアクセス

猪伏の大トチを目指すには、まずは「ケヤキ平 駐車場」へ車で向かいます。
四国カルストの姫鶴荘から姫鶴牧場を通過し、途中、道が二本にわかれます。
左側(看板あり)の道を進み続けると行き止まりとなり、そこが「ケヤキ平 駐車場」です。
駐車場は複数台が利用可能。平日はもちろん、おそらく休日でも満車になることはないでしょう。

駐車場から猪伏の大トチまでは片道1km。
時間にすると30〜45分程度。道はアップダウンは多少あるものの、平均すればほぼ平坦。
道中には、石灰岩や苔、落葉、倒木など原生的な森を楽しめて最高の散歩道です。

まとめ

四国カルスト周辺の原生林に存在する「猪伏の大トチ」。
人が誰もおらずゆっくり撮影するにはもってこいの場所です。
国有林内にありますので、ドローンを飛ばすにはぜひ入林届の提出を忘れずに。
今回訪れた夏前も緑溢れてきれいですが、紅葉のときもまた違った光景できれいでしょうから、季節を変えて何度か訪れてみることをおすすめします。