世界的にも珍しい自然現象「肱川あらし」。
霧が川の上を通って伊予灘の海へ流れ出す自然現象で、冬場の早朝にさまざまな条件が揃うことで現れます。規模が大きくなると神秘的でとても撮り甲斐のある被写体です。
この記事では肱川あらしの解説とドローン撮影に関して、実際に撮影してきた映像とともに紹介していきます。
肱川あらしとは
「肱川あらし」は上流部にある大洲盆地で発生した冷気が霧を伴い、肱川を通って伊予灘の海へ一気に流れ出す自然現象のことです。
さまざまな気象条件が揃わないと出現せず、条件次第で発生する規模や時間は異なります。本当に規模の大きなものは数回程度しか発生しないためなかなか見れません。
肱川あらしは「日本三大川あらし」のひとつにも数えられています。
- 日本三大川あらし
- ・肱川あらし(愛媛県)
・円山川あらし(兵庫県)
・川内川あらし(鹿児島県)
愛媛県大洲市長浜の肱川河口付近、長浜大橋あたりで見れます!
観測スポット・アクセス
肱川を通って流れてくる「肱川あらし」は主に2箇所で観測できます。
- 肱川あらし展望公園
- 長浜大橋
肱川あらし展望公園
「肱川あらし展望公園」は山の上から観察できるスポットです。
海へ流れ出す様子を高い位置から観察できるため、全体を見たい・撮影したいならぜひ展望公園をおすすめします。こちらは車でのアクセスです。
長浜大橋
肱川あらしを間近で体感できるスポットです。
「どれくらい強風なのか?」「どれくらいの音がするのか?」を体感できます。肱川あらしを真正面から体感・撮影したい人はこちらをおすすめします。
現場はかなりの強風なので防寒対策は万全に。駐車場(坂本龍馬宿泊地 観光駐車場)も用意されていますので安心です。利用時間は7時から17時。
赤橋と呼ばれる「長浜大橋」からはもちろん、河川敷や新長浜大橋からも観察できます。写真撮影などで赤橋を入れる場合は新長浜大橋から撮るといいですね。
出現する条件とは?
「肱川あらし」が出現するにはさまざまな条件が揃う必要があります。
- 大洲盆地の前日の湿度が高い
- 夜と明け方の温度差がある
- 河口付近の海面温度が高い
- 南側から適度に風が吹く
- 晴天時
肱川あらしは「温度差」によって出現します。
上流の大洲盆地で前日は晴れて暖かく、明け方に気温が下がることで放射冷却で霧が発生。それが風によって流され肱川を通って伊予灘(海)へ抜けていきます。伊予灘に出ると、流れてきた冷気と海水の温度差により蒸気霧が発生し、海上にも霧が発生するのです。
当日は晴れているのが条件です!
出現しやすい時期・時間
「肱川あらし」が出現する時期は冬場のみで、具体的には10月から3月になります。
狙い目は11月と12月です。理由は、昼間は温かく早朝は寒くなる日が多いから。同じ理由で2月や3月も狙い目となります。
発生する時間は早朝6時から8時くらいがピーク。暗いうちにすでに発生していることもありますし、10時くらいまで発生していることもあります。どちらにしろ6〜8時が狙い目です。
予報会をチェック
時期になると、肱川あらしが翌日発生するかどうかを前日の夜に「肱川あらし予報会」が予報を出してくれます。
前日の条件と翌日の条件を照らし合わせ、さらに長年観測している経験から、発生するかどうか断言してくれます。
しかしこれは必ずしも当たることはなく、「発生する」と予報していても発生しないこともあり、逆に「発生しない」と予報しても大規模な肱川あらしが発生することはあります。
あくまで予報ですのでその点は大目にみましょう!
もし肱川あらしを見に行くなら絶対にこの予報会の情報は前日に見ておきましょう。
肱川あらし予報会のYouTubeチャンネルで前日20時頃までに更新されます。
行く直前に確認する方法
肱川あらしを観測できる場所にはライブカメラが設置されており、24時間ネット上で自由に確認できます。
早朝まだ暗いうちは見えづらいですが、発生していると暗いなかでもかすかに霧の流れが見えますので、近くにお住まいならそれを確認していくとより高い確率で見れます。
ライブカメラで確認して実際行ってみるとない、なんてこともあります 笑
肱川あらしをドローンで空撮
以前から撮影したかった「肱川あらし」を2022年12月初旬に撮影しました。
まぁまぁの規模になり、ドローンで撮影するにはちょうどいい規模でした。というのも、ドローンは上空150mまでしか飛ばせません。これ以上規模が大きくなると、流れてくる霧の高度が高くなり(霧が厚くなり)、霧の上を飛ばしたりできず飛行範囲が限られます。
当日は強風のなかでの撮影でした。防寒対策はバッチリでしたが、それでも風が冷たいので1時間も突っ立って操作しているとさすがに寒かったです。
それでも2022年の締めくくりで最高の映像が撮れました!
どこを飛ばして撮る?
肱川あらしの撮影は海上か河川のどちらかになります。
肱川も海上も許可なく飛ばせます(航空法の遵守は必要)。ただし橋の上空を通過する場合には人員の配置が必要ですし、電線もありますので引っ掛けないよう注意。
河川では上流から流れてくる放射霧を、海上では海面付近に発生する蒸気霧を撮れます。
- 肱川あらし展望公園でドローン飛行は可能?
- 「肱川あらし展望公園」でドローンを飛ばすには事前に大洲市へ申請する必要がありますので、申請なしで当日飛ばすのはNGです。
強風だけど飛ばして大丈夫?
河口付近はかなり強風で、風速10m/sを超えることもあります。
結論から言えば、機体によっては飛ばせます。
例えば、DJI Mavic 3やDJI Air 2、Phantom 4などでは問題なく飛ばせます。Miniシリーズは耐風性能以上の風が吹くため、高確率で戻ってこないでしょう。Mini シリーズでの飛行はやめましょう。
Miniシリーズ以外の機体で撮影!
強風のときは基本的に風上から風下に向けて撮ると未帰還の確率は減らせます。海へ蒸気霧を撮りに行くと帰りは向かい風になるため要注意。
飛行マニュアルに注意
注意しなければならないのが法律面です。
撮影するには国土交通省へ飛行許可・承認申請が必要ですが、申請する際の「飛行マニュアル」によっては風速5m/s以上のときは飛ばせません。肱川あらしの撮影では風速5m/sを超えるため、多くの人が利用している「航空局標準マニュアル02」では飛行不可です。
もし風速5m/s以上で飛ばすには「独自マニュアル」で申請する必要がありますので、独自マニュアルで風速の部分を以下のように書き換え申請しましょう。
「メーカーが定めた風速抵抗値を超える状態、もしくはメーカーが定めた風速抵抗値を超えることが予想される状態では飛行させない。」
上記のように変更すれば機体の耐風性能値まで飛行可能です!
撮影で意識すること
肱川あらしを撮影する際に意識すべきことは以下の通り。
- 放射霧と蒸気霧を撮る
- 赤橋(長浜大橋)を入れる
- 厳しい環境(強風)を表現する
放射霧と蒸気霧を撮る
肱川上空を流れてくる「放射霧」と海面に発生する「蒸気霧」の両方を撮ります。
つい放射霧に夢中になり、蒸気霧を撮り見逃さないように注意しましょう。
放射霧は霧のなかを進むのも良し(マニュアル注意)、霧の上を飛ぶのも良し。低い高度から高い高度へ一気に高度を上げるのもドローンならではの撮り方です。
撮り方は現地でいろいろ試行錯誤するといいと思います!
蒸気霧の撮影は、なるべく海面ギリギリまで高度を下げることをおすすめします。強風で波打つ海から立ち上る蒸気を捉えることができ、バックに太陽を入れると神秘的です。
赤橋(長浜大橋)を入れる
肱川あらしを撮るなら地元で赤橋と呼ばれている「長浜大橋」は入れましょう。
歴史のある趣ある橋なのでとても絵になりますし、この橋を通り抜ける霧は幻想的。
厳しい環境(強風)を表現する
「肱川あらし」が吹く地上ではもの凄い強風で、とても厳しい環境です。
霧が流れている様子をおさめるのも大事ですが、一体その流れがどのくらいの速さなのかを表現するのはありです。
上空からドローンで撮影しただけでは風の強さはそこまで伝わりません。地上カメラで撮影したり、あとで風の効果音を入れたりして、撮影時にも編集時にも「風」を意識することで、よりいい映像になるのではないかと思います。
まとめ
冬季にさまざまな条件が重なったときにのみ出現する自然現象「肱川あらし」。
規模が大きいためドローンが活躍する被写体で、地上カメラやヘリコプターでは撮れない撮り方ができます。撮影中も興奮するような、とても神秘的で幻想的な映像を撮れますので、ぜひ機会があったら撮ってみてください。